• 地引 由美 Yumi JIBIKI

「パフューマー」と「調香師」

最終更新: 1月5日

 インターネット上で散見されるアンケートによると日本では、香水を纏う人は全体の24%であるとか、いや、昨年は50%を超えたとか。アンケートに答える方のシチュエーションにもよると思いますが、年毎に増えてきていることは間違いありません。何事でも反対を叫ぶ声は注目を集め大きく響くので、いまだに香水はマイナスのイメージとセットにして語られることが多いのですが、人間が良い香りに魅力を感じるのは理屈ではなくごく自然に備わっている感覚です。そして、他人のために、自分のために、良い香りをさせたい、と願うのも当然のことでしょう。



 ところで、日本語はマイナーな言語ですから話者の多い英語、またはフランス語等で書かれた書物や、表される事柄などを理解するために、日本語に訳したり言い換えたりすることが不可欠です。で、そこには時々訳者の主観が大きく入ることも。「調香師」という言葉は、資生堂で香粧品の調香を担当していた堅田 道久 氏がラジオ番組に出演する際にアナウンサーから問われて、自らの職業を「調香師」と述べたのが最初とか。堅田氏は1955年にグラースに渡り、調香の勉強をされていました。  


 その後、1965年にグラースに滞在し香水について研究されていた藁 玄雄(わら はるお)氏という方がいらっしゃいます。旧制第四高等学校を卒業されてから香料会社で毎日数知れぬ香料を嗅ぎ分けることからスタートし、持ち前の研究心から香りと香料について分類を始めて、系統立てた資料を作成し、数多くの香粧品の香りを調香します。やがて、トンバレル フレール社の所属となり長く活躍された後、ローチェ フィス社にてジャン=クロード・エレナらと共にクリエーションを行います。ローチェ ジャパン株式会社フラグランスマネージャーであり、フリッチェ ドッジ アンド オルコット ジャパン フラグランスマネージャー、株式会社永廣堂本店 取締役開発担当 として、香水を愛し、香水に愛された稀有なパフューマーです。晩年までしっかりとした矜恃を保ち、品格ある言葉でグラースの良き時代の香水のお話はもちろん、当時のグラースで生活や社交についても、たくさんのことを教えて頂きました。藁先生は常に「パフューマー」とおっしゃっていました。調香師という言葉を使われなかった理由は先生、師匠、指導者といった意味の「師」がついていることに納得されていなかったからです。「師」はその道の専門家であることも表す漢字ですから意味として問題は無いのですが、香りを創作することに対して全ての人は平等であるから「師」がつくことには納得できないと。

 香りの批評に関しては非常に厳しい方でしたが、自らが権威となって偉ぶることを徹底的に嫌っていた方でした。フランス、そして、グラースに行く度にいつも藁先生のことを思い出します。



 11月のパリの最後の夜は、 大沢 さとり さまと、パリ在住のクリエイター、渡辺 裕太 さまと LE MARIE-SUZY でのディナーです。2000年から自身のブランド PARFUM SATORI を大切に育て上げていらした大沢さまと、今年、2020年に自分の香水ブランドをローンチされる渡辺さま(現在、WonderFLYのクラウドファンディングプロジェクトにて日本人の為の香水をつくるプロジェクトのサポートを募集されています)。香水に関わるキャリアは対照的でも、香水のクリエーションに対する思いは誰にも負けないお二人と行動を共にして、会話を通して、最終日に思ったことがこのブログのタイトル。


 フランス語は動詞から派生して、そのことを行う人や職業を表す言葉になることがあります。

danser ダンセ 踊る、という動詞から ダンサー、舞踊家 danseur / se(ダンスール、ダンスーズ)


chanter シャンテ 歌う、という動詞から 歌手  chanteur / se(シャントゥール、シャントゥーズ)



パフューマー はというと parfumer パフュメ 〜をよい香りで包む,芳香で満たす、〜に香水をつける、〜に風味[フレーバー]をつける

という動詞から派生して

parfumeur / se(パルフュムール、パルフュムーズ)となります。


 生業として調香を行うだけでなく、香りで世界を幸せで満たす。誰かを幸せにする香りを世の中に生み出す。そんな仕事がフランス語でのパフューマーなのだと。そして、香水をつける、香りを纏う、香水が大好きな私としては、これからも誇り高きパフューマーが発表する素晴らしい香りに包まれていきたいなぁと。ワインに酔い、デ セールで甘やかされた頭でそんなことを考えていたのでした。



 今回もたくさんの香水に関する本を購入したり、頂いたり。嬉しいです。香水に関わっていることを喜びながら読み進めていきます。



■ 関連ブログ ■

11月9日のこと グラースへ https://www.styleetparfum.com/blog/grasse2019

11月10日のこと 秋のカンヌ  https://www.styleetparfum.com/blog/cannes2019

11月11日のこと 雨のグラース https://www.styleetparfum.com/blog/grassepluvieux

11月12日のこと カンヌからアンティーブへ https://www.styleetparfum.com/blog/decannesaantibes

11月13日のこと3-1 グラースの国際香水博物館に日本の香水が収蔵されました https://www.styleetparfum.com/blog/museeinternationaldelaparfumerie-remisedeparfum

11月13日のこと3-2 ディアンヌさんとフランソワさんのご自宅へ https://www.styleetparfum.com/blog/dejeuner-dianesanetfrancoissan

11月13日のこと3-3 グラース旧市街の様子 https://www.styleetparfum.com/blog/aucentregrasse2019

11月14日のこと2-1 晩秋の花畑 https://www.styleetparfum.com/blog/leschampsdesfleursenlautomne

11月15日のこと2-1 スイスはヴィーガンLove? https://www.styleetparfum.com/blog/swissair-vegan

11月15日のこと2-2 エレクトラ パレス アテネ

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11月17日のこと2-1 アテネからパリへ https://www.styleetparfum.com/blog/de-athenes-a-paris

11月17日のこと2-2 凱旋門とフリドラン大通り https://www.styleetparfum.com/blog/avenue-de-friedland

11月18日のこと2-1 パリで - 8区、4区、3区

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11月18日のこと2-2 フランソワ・エナン氏とJOVOY PARIS https://www.styleetparfum.com/blog/jovoy-paris

11月19日のこと2-1 ジャン=ミッシェル・デュリエ パリ https://www.styleetparfum.com/blog/jean-michel-duriez-paris








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