• 地引 由美 Yumi JIBIKI

シャネルのボードリュシャージュ


 「ボドリュシャージュ(=baudruchage)」という言葉は以前愛用していたジャン パトゥのジョイのパルファンの取り扱い説明書にありました。香水が蒸発しないように栓と瓶のつなぎ目に、約0.001mmの厚さに伸ばした牛・羊の腸膜を巻き付けて密封する技術です。 動物の腸膜といっても、しっかりと加工がなされていますので清潔で無臭です。この腸膜はフランス語ではボドリューシュ(=baudruche)、英語ではゴールドビーターズ スキン(=goldbeater's skin)と呼ばれ、弾力性に富んでいて破れにくいので、金箔を作る際の箔打ち作業(goldbeating)にも用いられます(日本では金箔作りには紙が用いられますから、文化の違いが表れていて面白いですね)。  ジャン パトゥの説明書には「ボドリュシャージュ」の後、「セルティサージュ(=

sertissage)」という工程で栓と瓶が外れないように金糸を掛けるとありました。どちらも専門の職人が行う作業です。  昨年の10月19日から12月1日まで天王洲のB&C HALLで開催された、シャネルの マドモワゼル プリヴェ 展。シャネル N°5 ボードリュシャージュ体験プログラムがあったので出かけてきました。会場ではフランスからいらした職人の方が説明やクイズを交えながら実演してくださり、参加者は職人の方のアドバイスを受けて、No.5のボトルの形が浮き彫りにされた特製の台紙にシーリングをし、それを持ち帰ることが出来ます。下の画像には樹脂を溶かすヒーター(温度設定は165℃ですね)、パールコットンと呼ばれる黒い糸の巻かれた糸巻き、そしてシャーレの上のボドリューシュ。


 ボドリュシャージュの説明は、「栓と瓶のつなぎ目に膜を置いて、左右に引っ張りながら交差させながら覆います。そして黒い糸を栓と瓶のネックの間にひと結び。次に瓶のネックに糸を2周させて二回結びます。そして余分な膜をカットします。最後に溶かした樹脂にCCロゴの刻印をします。こちらも2回行います。最初は糸の結び目を止めるために小さく。2回目はロゴをはっきりと美しく見せるためにやや大きめに。」と。ボドリュシャージュ+セルティサージュ+カシュタージュ(=シーリング)かなと思いましたが、すべてまとめてボードリュシャージュ、と呼んでいるようですね。ボドリュシャージュを行うことが出来る職人さんは11名で、そのうち3名が今回来日されているとのこと。


 さて、実演中の職人さんから参加者に向けての質問です。 一人の職人は1時間に何本のボドリュシャージュができるでしょう?


 答えは下記のYou Tubeからご覧ください。


 ところで、シャネルのボードリュシャージュ体験は何が出来るのか知らないまま、手元にあったNo.5のパルファムを持って行きました。それは黒いシーリング部分が破損していたのですが、それを見るなりフランソワーズさん(私たちのグループを担当してくださった方です、職人としてのキャリアは○10年だそうです)が「これ、直してあげるわ!」と。上の動画でフランソワーズさんがボドリュシャージュしているのが私の私物です。そして何かに気がついたフランソワーズさん。通訳の方に「見て、これ!この二つ比べて!」


 さらに隣のキャリア7年の職人さんを呼んで「あなた、これ見たことある?現在発売されている製品は15mlだけど、これは14mlなの」。呼ばれた若い方も「初めて見るわ。だけどこれでわかった、刻印に15と14がある理由が。14は14ml入りの製品用の刻印だったのね」


 お二人で見比べて盛り上がっていたので、私も嬉しくなりました。同じデザインのシャネルスーツでも、サイズが違えばそれに合わせてボタンの大きさを微妙に変えていますが、香水瓶のシーリング用の刻印までもミリ数に合わせた専用のものがあるとは、さすが、というかやはり、というか。



 少し褐色がかっているのが14ml。その他はすべて現行品の15ml。



 私も持ち帰り用の台紙にシーリングをさせて頂きました。



 持参したボトル。すっかりきれいになりました。


 オートクチュールのスーツやドレスはもちろん息を飲む美しさでした。制作にかかった時間が表示されているのですが作業時間2,000時間越えのものも。やはり人の手と時間がかけられたものはとても贅沢ですね。


 


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