「いくら素晴らしい歌でもフランス語の歌詞がわからなければ、その魅力を伝えられない」とシャンソンを日本語で歌うことにこだわったのが越路吹雪さん。1924年に東京の麹町に生まれ、子供の頃から歌うこととおしゃれが大好きだった彼女は宝塚歌劇団に所属し、戦後は男役の大スターとなります。1953年に初のフランス旅行に出かけて、パリのファッションと舞台芸術に触れたあとは、そのエッセンスを日生劇場の『ドラマティックリサイタル』などの舞台に存分に生かして活動されます。
小学生の頃、その越路吹雪さんのリサイタルを観に行っていました。当時の越路さんは53歳くらい。今の私よりもずっと若かったのですね。美しい衣装、独特のメイク、何よりも演劇を観ている様な歌の世界。舞台での迫力は子供心にも衝撃でした。しかし、最高のパフォーマンスをするためのプレッシャーで、お酒とタバコと睡眠薬が欠かせなかった、などということを知ったのは、もちろん大人になってからですが。
生誕100年 越路吹雪衣装展 が 早稲田大学演劇博物館 で開催されていると知り、今日ようやく観覧してきました。
イヴ サンローランのドレス。ニナ リッチのステージ用シューズ。舞台照明に映える大きなアクセサリー。どれもゴージャスで子供の私がかっこいい!と思っていたもの。
そして、越路吹雪さんが愛用したという香水も。お道具箱に入れられたままでの展示だったので、シャネルはグレーのレフィラブルスプレーボトルだけど、どの香りかは不明。クロエは薄いガラスボトルだったからオードトワレかしら。はっきりと見て取れたのはオリジナルボトルの エルメスのアマゾン。姉御肌でさっぱりとした性格だったそうなので、この香りはとても似合いそう。そうすると、シャネルはNo.19だったのかしら…。担当の方にお問い合わせをしましたが、詳しい香水名は不明とのことでした。ひっくり返して見せてくれたらすぐにわかるのですが。その他にも色々とあったのですが、まぁ、それはさておき。
初めて足を踏み入れた早稲田大学の構内。ちょうど午後の授業が終わった時間だったようで、南門から溢れるように出てくる若い人たちに逆らう様に真っ直ぐ奥へ。演劇博物館は16世紀イギリスの劇場 フォーチュン座 を模したという建物でした。正面の庇の下の文字は "Totus Mundus Agit Histrionem" 全世界は劇場なり というラテン語。
3階の常設展示では、ディアギレフの信頼を得たバレエリュス最後のスターダンサー、セルジュ・リファールが 1952年10月に来日した時に寄贈されたバレエシューズを見ることができました。ジゼル用の黒いシューズと、ロミオとジュリエット用の白いシューズ。そして1936年に来日し、ロシア=ソビエトバレエを日本に伝えたオリガ・サファイアの足形銅像もあり、眼福眼福。ぎしっ、ぎしっと鳴る木の床を踏みしめながらの、素晴らしい鑑賞のひとときでした。
コメント