• 地引 由美 Yumi JIBIKI

香道の世界 / KODO 〜志野流香道500年の継承〜

更新日:6月9日

大本山増上寺の宝物展示室にて『香道の世界 / KODO 〜志野流香道500年の継承〜』展が開催されています。



2019年にお話をお聞かせ頂いた時にプロジェクターのスクリーンで見せて頂いた貴重な資料やお道具、そして香木の展示もあるとのことで、初日の4月16日の開館と同時に会場へ。入場券のNo. の末尾は 001 。



ドキドキしながら夢中になって観ていて、帰りにランチをしたビストロでようやく、入場時に頂く作品目録に解説が書いてあったことに気づくという。



5月2日。この日は香りのおしゃべり会の会員様お二人とご一緒に鑑賞しました。あらためて間近で観るお道具の美しいこと。各人それぞれが心惹かれる展示品が異なっていて、感想を交わすのも楽しい。ここ2年以上リアルでお会いできなかった方とは、お顔を見られるだけでも喜ばしいこと。 帰り道の東京タワーには、親子連れがたくさんで笑顔もたくさん。鯉のぼりも嬉しそう。



そして、5月28日は『令和蘭奢待献香式』と『献香式記念特別聞香席』。香りのおしゃべり会の会員でもいらっしゃる、志野流の直門弟子のK様が早めにお知らせくださったので、プラチナチケットを入手することが出来ました。

名香木『蘭奢待』の名は、香水について学ぶ時も必ず出てきますね。奈良の東大寺正倉院に収められているこの香木は、実際に目にするとその大きさに驚きます。時の権力者をも魅了し、足利義政、織田信長、明治天皇により截斷された切り口には、それぞれの名が書かれた付箋が貼られています。

この度は志野流に伝わる貴重な『蘭奢待』を徳川将軍家ゆかりの大本山増上寺にて徳川家康公そして歴代の将軍に献香し、「世に蔓延る陰鬱とした闇を香りをもって祓い清め、国民の心の安寧と世界の平和を祈る」(『卯の花 志野流香道』 より)ことがこの献香式の目的とのこと。

香水=perfume の語源は、ラテン語の per(通じて) fumum(煙)です。原始的な宗教の始まった大昔から、人間の住む『地』と信仰の対象である神の住む『天』をつなぐ唯一のものは火から上がる煙であり、神様に喜んでもらえる様に、その煙に良い香りをさせて届けようと樹脂や香木を火にくべ始めたということには皆が首肯するでしょう。日本においては、立ち上る香の香りはその場を清め、仏様と人を繋ぎ、さらには仏様の食べ物となります。

香道において香木から煙を出すことはしませんが、現代において香りで祈りを捧げる per fumumu を体感できるこの機会に、ぜひ参列したかったのです。 献香式の会場の本殿内の撮影は禁止でしたし、記載に間違いがあってはいけないので式の詳細は記しませんが、志野流二十代家元 幽光斎宗玄様 のお点前が始まる前には、もうどうにも落ち着かず、壁際の関係者の方の傍にそっと並んで立ち、この目で見つめていました。とても椅子に座ってはいられませんでした。会場でご一緒になった日本のフレグランス業界の重鎮の方も、気がつけばお隣に。家元後嗣 一枝軒宗苾様が香炉をすっと掲げた時に、本殿内の空気が確かに動きました、まるで目に見えない方がふと微笑んで喜ばれた様に。


午後からは『献香式記念特別聞香席』です。まず、志野流に代々伝わる家木の香りを聞かせて頂ける『名香席』へ。貴重な三種の香りはどれも品よく、柔らかです。香りの感動の連続に、一息つきたいな、と思ったら次は『呈茶席』へ。この大きな会場でたくさんの人の中でお会いできるかしら、と思っていた方にここで少しお話しすることができて一緒に撮影。光摂殿大広間の素晴らしい格天井を画角に入れて撮ってくださった方も、今回の香が繋いでくださった良きご縁で、感謝多謝。



『点心席』の会場前で。この後は『組香席』へ。硯で墨をすって筆で文字を書くのは何年振りでしょう。見よう見まねで回ってくる香炉を手に取り、香りを聞いた後に次の方へと回します。時間と共に変化する香りを当てるのは難しくて楽しい。



そして、6月4日。香りのおしゃべり会の会員様向けに『特別聞香席と展示鑑賞ツアー』を行なってくださいました。前日は大雨。『蘭奢待献香式』の前日も都内は大荒れのお天気でした。聞くところによると、志野流香道の大きな催しの前の日には、お天気が荒れることが多いそうです。清めの雨でしょうか。

2019年の会にも参加された方や、普段から香を聞いている方もいらっしゃいますが、ご参加のほとんどが初めて香道に触れる方です。私にも緊張が伝わって来たようで『卯の花』を読み返してみたり、当日まで落ち着きませんでしたが。



会が始まると蜂谷様の温かなお声に、気持ちが和らいでいきます。

「視覚に頼り過ぎて普段はoffにしている香りを感知するスイッチを入れましょう」

「香木の香りは向こうからは来てくれないので、自分から向かって行きます。そうすると、どこかで一つになるところがある」

「私があまり人間の言葉で説明しない方が良いですね、自然界が、香木が、語りかけてきます。語りかけてくることを心で感じてください」

「毎日香木と向かい合っていても終わりはありません。私の後ろにいらっしゃる20人(の歴代のお家元)もずっとそうしてきたのです。私などまだ失敗ばかりです。最後は香木くんに『良い香り出してね』と語りかけるんです。『よろしく』と。そうすると叶えてくれるんです」 わかりやすく、やさしくお話ししてくださるのですが、その言葉の奥にある「ただひたすらに香を聞く」こと。それを500年の間、歴代のお家元が二十代に渡り続けて来られた重みに感じ入ります。


お稽古を続けていらっしゃる方は、香を聞く姿も美しく。



門外漢の私の感想など記すのもお恥ずかしいですが、蜂谷様の手を通った香炉からの香りは、たくさんのことを語ってくれると感じます。2019年の時も、香りを聞いていると瑞々しい青葉の香りが溢れ出してくるのを感じたのです。まるで香木が「私の若い頃は深い森の中にいて…」と語ってくれているかの様に。

この日に聞かせて頂いた貴重な三つの香りも素晴らしく、中でも二つ目の香りの声が少し聞こえたような気がしました。同席の皆さまそれぞれのご感想も、ゆっくりとお聞きしたかったです。



家元後嗣 一枝軒宗苾様を囲んで。お打ち合わせと当日のお世話をしてくださった志野流のA様と、遠くから馳せ参じてくださったK様。本当に有り難うございました。

特別聞香席の後は『香道の世界 / KODO 〜志野流香道500年の継承〜』展の鑑賞ツアーです。

展示物の前で貴重なお話をお聞かせいただきました。



歴代のお家元のなされて来たことをお伺いすると、掛け軸に描かれた人物が生き生きと見えてきます。


楽しそうね、綺麗ね、という感想も聞こえます。女性はやはり美しい細工のお道具には、心惹かれます。



志野流香道の500年の歴史を知りたい、感じたいと、参加された皆様とご一緒に。素晴らしい時間を共有することができました。香りと共にたくさんの笑顔が浮かび、心が癒され、ここ2年間の疲れや緊張が雲散霧消した様に感じた1日でした。 最後に重ねて、家元後嗣 一枝軒宗苾様、志野流の皆さま、ご参加くださった皆さま、そして私と志野流香道を初めて繋いでくださった方、有り難うございました。 『香道の世界 / KODO 〜志野流香道500年の継承〜』展の会期は6月26日(日)までです。これからご覧になりたい方、ぜひご一緒致しましょう。 特別展 香道の世界 〜特設サイト〜 https://www.shinoryu.jp/


※特別聞香席、及び『香道の世界 / KODO 〜志野流香道500年の継承〜』展会場での撮影は許可を頂きました。


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