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  • 執筆者の写真地引 由美 Yumi JIBIKI

ガチョーク讃歌 プロジェクト 2023 - GGG Project 2023

2023年8月10日、横須賀芸術劇場で開催されたバレエ公演『ガチョーク讃歌 プロジェクト 』を鑑賞しました。感慨深い公演だったのでブログがとても長くなりそう。そこで初めて、ブログの目次立てをしてみました。 1. 『ガチョーク讃歌』とは、そして作品に対する個人的な思い入れ

2. 発売日にチケット購入

3. クラウドファンディングがスタート 4. バックステージツアーの様子

5. 公演 第1部 6. 公演 第2部

7. 公演 第3部

8. 終わりに

□ - - - - - - - □ - - - - - - - □ 1. 『ガチョーク讃歌』とは、そして作品に対する個人的な思い入れ 今回の公演のタイトルになっている演目『ガチョーク讃歌』 Great Galloping Gottshalk とは、アメリカの作曲家、かつ天才的なピアノプレーヤーでもある ルイ・モロー・ゴットシャルク Louis Moreau Gottschalk の曲のうちから、振付家であるリン・テイラー・コーベットが6曲選び、1982年にアメリカン・バレエ・シアター(ABT)のために振り付けた作品です。初演は今からもう41年前になるのですね。

ゴットシャルク(英語読みでガチョーク)は1829年にアメリカ合衆国南部ルイジアナ州のニューオーリンズで、少し複雑で異文化に満ちた家庭に生まれ、6人の兄弟姉妹と育ちます。幼い頃から好きだったピアノの演奏はルイジアナのブルジョワ層に認められて、11歳で非公式にデビュー。そして13歳の時にはクラシック音楽を勉強するために父と共にパリに向かいます。しかし!アメリカ人だから、という理由でパリ音楽院では演奏を聴いてもらうことも出来ずに門前払い。アメリカを文化後進国だと見る故の差別ですね、今なら大問題。その時はクラシックを体系的に学ぶことは出来ませんでしたが、彼はクラシック音楽の歴史においてルイジアナ クレオール音楽の礎となります。ルイジアナ クレオールとは「1803年のルイジアナ買収によって米国の一部になる前の、フランス領ルイジアナ時代の移住者を先祖に持つ全ての人種及び異人種間の混血の人々、またはこれらの人々の独自の文化とクレオール料理(Wikipedia)」を指します。とにかく、さまざまな文化が混じり合い軋轢のある地域、時代に育ち活躍した方なのですね。スキャンダルでアメリカを離れた後、南米を周る演奏旅行の途中で黄熱病に倒れ、40歳の冬、リオデジャネイロのホテルで彼は息を引き取ります。 その人生故か、彼の旋律はどこか物悲しくて、でもとてもあたたかい。深い悲しみと多幸感。哀愁と弾けるような楽しさ。旋律は感情の波を呼び起こす魔法の壺の様です。 これらの曲のエッセンスを汲み取ってステップとムーブメントに落とし込み振り付けをしたのは、映画『フットルース』(1984年)やブロードウェイミュージカル『スィング!』(1999年)など、ハリウッドのトップで活躍した女性振付家、リン・テイラー・コーベット Lynn Taylor-Corbett 。当時、ミハイル・バリシニコフが芸術監督を務めるアメリカン バレエシアター(ABTね)の作品として、1982年1月に初上演されます。そして日本では1984年の秋の来日公演の際に、東京と大阪で上演されました。なお、当時の表記は『讃歌』でなく『ガチョーク賛歌』。


香水が好きなのに、なぜかこのバレエ鑑賞ブログを読む羽目になっている方のために。産業革命によって社会が大きく変わる時代を生き、香料ヘリオトロピンが合成された年に没した多文化の要素を身につけた作曲家の音楽。そして、バブル経済から2000年問題へと向かう頃、カルバン・クラインの優れたマーケティングで連作として発表した香水の様に、社会生活で陥る『オブセッション』(1985年)に悩まされつつも、その中で見つけた恋人と永遠の愛『エタニティ』(1988年)を誓い、ネット社会のストレスから『エスケープ』(1991 年)し、ナチュラルな生き方『CK-1』(1994年)を希求するうちに社会の矛盾『コントラディクション』(1997年)に気付き、新しい真実『トゥルース』(2000年)を見つけるという、そんな生活を送っていたアメリカの都市部の人々の心をグッと掴んだ振付家による作品です、というと親近感が湧くでしょうか。

□ - - - - - - - □ - - - - - - - □ 2. 発売日にチケット購入 さて、私事。はるか昔、大好きなバレエに関わることが辛くなり始めた頃、私の心にこの『ガチョーク賛歌』がどハマりしました。NHKの芸術劇場を録画したビデオ(今はブルーレイに移しました)は、おそらく数千回以上観ていると思います。私の血はワイン、といった女優のように、当時の私の心臓の鼓動はガチョークのリズム、でした。 そこまで個人的に思い入れの深い作品なので、2014年に日本のNBAバレエ団が『ガチョーク賛歌』を上演する、というニュースを知った時もどうしてもABTと比較してしまうと思い、気乗りがしなかったのです。その後、何回か国内でも上演された様ですが、やはり今ひとつ。ところが今年SNSで流れてくる告知を見たら、主催者は2021年から上演を続けている春田琴栄さんという方で、この作品に惚れ込んでいるらしい。そして出演ダンサーは、国内外の一線で活躍されている方ばかり。さらにバレエコンサートも上演するらしいと知り、4月1日のチケットの発売日の10時を待って、好みの席を購入しました。発売日にチケット購入しておくのはいつぶりでしょう。

□ - - - - - - - □ - - - - - - - □ 3. クラウドファンディングがスタート

さらにその後、7月に入って、この公演に関連したクラウドファンディングが発表されます。その中に『横須賀公演 VIP席+バックステージツアー』というプログラムがありました。この日は一日空けてありましたし、舞台稽古を見学できるなら嬉しいと思い、支援に参加。あ、Tシャツも一緒に申し込みました。VIP席はどの位置になるのか教えて頂いたら、最初に自分で予約した席の方が好みでしたのでそちらに座ることにして、支援額を調整して頂きました。事務方もとてもお忙しいだろうのに、丁寧な対応に感謝です。郵送して頂いていたVIP席チケットはデザインが素敵だったので、処分する前に画像に残しました(次のブログに載せました)。


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4. バックステージツアーの様子 という訳で、猛暑日が平常運転なこの暑い夏の日、横須賀へと向かいました。備忘録として、旅程は六本木から大江戸線で大門に出て、京急三崎口行きに乗り換えて1時間10分。

待ち合わせは 13:15に横須賀芸術劇場の楽屋口前。13:00少し前に京急の汐入の駅に着き、劇場に向かっているとお団子ヘアにピンクタイツの小学生の女の子とそのお母さん、何組かとすれ違いました。バックステージツアーの前の11:00 - 12:30までは、劇場内のリハーサル室で人気のバレエYouTuberで、この日も出演される松浦景子さん(けっけちゃん)の特別ワークショップがあったそうです。楽屋口に着き待っていると、何名かのダンサーが出入りされました。女性も男性もスタイルが良くお美しく爽やかに挨拶をしてくださいます。参加者が揃ったところで係の方からパスを受け取り、劇場に入ります。楽屋口って懐かしい。階段を4階分上がってホワイエに出て小学生10名と合流。皆で、客電を落とした劇場内の上手側の客席に座ると、衣裳付きでガチョークの場当たり&照明の調整をしているところでした。わぁ、本当に上演するんだ、と実感。この日のために買い直したオペラグラスやハンカチなどいそいそと膝の上に揃えます。いよいよ音楽をかけてガチョークのゲネがはじまった途端に私、爆涙。もう止まりません。しなやかで力強いダンサーの動きはABTに劣らない。ストーリーが伝わってきます。このゲネで私の涙のストックは限りなくゼロに近づきました。 途中で曲が止まるなどありましたが、スムースに終わりました。 その後のアイドリングタイムに、上手から舞台袖に連れて行ってもらいます。裏を通って下手側の袖へ(この逆を『バナナツリー』の男性ダンサーが上演中に走るのです)。客席に戻り、2部、3部のバレエコンサートのゲネプロを観ます。着席しようとしたら春田さんが「もっと前に来て大丈夫ですよ」と声をかけてくださったので、その後はさらに舞台近くで観ることに。 『ドン・キホーテ』のパドドゥでは、キトリを踊る大谷遥陽さんがアチチュードトゥールを見事に決めると袖から拍手と歓声が聞こえました。『ドン・キホーテ』のコールド&バリエーションを踊る若いダンサーたちが上げた歓声で、イングリッシュ ナショナル バレエのソリストの大谷さんと同じ舞台で踊る喜びが伝わってきます。ドンキチーム、みたいな。こんな貴重な機会は忘れられない夏になりますね。大谷さんのリクエストで、コーダのフェッテ時のピンスポットの角度光量の調整が行われました。

『嘆きのエスメラルダ』の通しでは、YouTubeのまおちかチャンネルでも大人気の主演の藤室真央さんが、ゲネと思えぬ熱演。そしてコーダで上手奥に下がるシソンヌで振り返って跳んだ時にコールドのダンサーと激突。まさに進む方向の体のいく場所が一人のダンサーの立ち位置になっていたのです。すぐに位置の調整をして、リピートします。ヒヤリとしましたが誰にも怪我がなくて何よりでした。舞台装置はないので、空間が広がって見えすぎない様に周囲を暗めにと、この時も照明の調整が行われました。 場当たりやゲネの間のダンサーの皆さまの様子から、舞台は彼らの戦いの場の様に思えます。絶対に失敗なんて『自分に』許さない、最高の踊りにする為の最後の調整に欠ける様子はなんというか、神々しくさえあります。

当初ゲネプロ見学は途中の17:00まで、とのことでしたが最後までたっぷりと、13:30頃から17:30頃まで、約4時間も観させて頂きました。近くの飲食店で急いで軽い食事をしてから、また劇場に戻ります。本公演は18:00 開場、19:00 開演。終演予定は 21:50で、観客の帰途を考慮してカーテンコールは無しと告知されています。


□ - - - - - - - □ - - - - - - - □ 5. 公演 第1部


下手緞帳前で、本公演の主催者の春田琴栄さんのご挨拶で開幕です。 【ガチョーク賛歌】 ※「賛歌」はプログラム表記のまま ・プエルトリコのみやげ 緞帳が上がると板付きのダンサーたち。同じデザインで色違いの、シンプルだけどカッティングの美しい衣裳。群像の中で回転し、しがみつき、また離れては駆け抜ける … 新国立劇場バレエ団 ファースト・ソリストの池田理沙子さんが踊る一人の女性が人々と交差するムーブメントが、印象的です。タイトルは " Souvenir de Porto Rico " とフランス語なのですよね。でこの Souvenir が邦題だと英語の「土産」になってしまう。これがどうにも納得いかない(笑)。仏語で第一義的にくる「思い出」であるべきだと思うのです。でなければ、個性豊かに一人ひとりを描くようなあの振り付けが意味をなさない。泉萌絵さん、別府佑紀さん、福田真帆さん、池田紗弥さん、三船元維さん(本公演の芸術監督)、山田悠貴さん、佐野和輝さん、北爪弘史さんが、皆同じ振りの時も動きに個性を残しつつも、エネルギーが同じベクトルを向いている。ステキでした。ただ冒頭、ゲネの時より体の線が硬く見えました。開幕直後で客席の空気も硬めだったかも。

・ある詩人の死

新国立劇場バレエ団で、共にプリンシパルの米沢唯さんと速水渉悟さん。米沢さんの美しさ、可憐さ、伸びやかさはもちろんのこと、ABTでこれを踊ったロバート・ラフォスと同様に、プロポーションが良く、素直に真っ直ぐに踊る速水さんが素晴らしいです。原題の " The Dying Poet " は瀕死の詩人。今まさに死にゆく詩人が彼岸と此岸の狭間の夢の中で踊るパドドゥ。詩人という職業なんて、多くの芸術家の中でもとりわけ俗世の糊口をしのぐのが大変だったことでしょう。それでも思い返す人生は素晴らしく、共に踊る女性は恋人、または妻の若い頃の姿なのか、いえ、美しすぎる旋律と、天使の遊ぶ空を思わせるブルーのホリゾントに同じブルーの衣裳に包まれてかき抱くのは、彼が生涯愛した芸術の女神なのだと思います。並び、踊り、与えられ、包み込まれ、操られ、時には捉えることができず、でもようやく喜びと共に彼女を胸にかき抱きながら人生という舞台から退場していく。解釈は受け手のそれぞれにある、という芸術鑑賞の定義に甘えて、私はこのように思っています。生涯曇りのない瞳で詩作を続けた詩人というキャラクターに清水さんがぴたりと重なり、ゲネで枯れたと思った涙がまた滂沱と落ちてきました。速水さんの詩人を繰り返し観るために2023公演のDVDを購入しようと思います。


・トーナメントギャロップ 女性三人の楽しい踊りは、新国立劇場バレエ団の五月乙遥さん、カレリア共和国音楽劇場バレエ団の藤室真央さん、イングリッシュナショナルバレエ ソリストの大谷遥陽さんの三人で。楽しく弾けるように踊る中に、ダンサーの素の表情が見られるのが格別でした。夏休みに集まった三姉妹、みたいな。五月乙さんはしっかり者の長女で、キリッとカッコ良く完璧に踊りながら妹たちのことにも目配りしてる。次女は藤室さんかしら。我が道を進む、こちらもキレのある踊りで時々ロシアっぽさが出るのも魅力。末っ子は大谷さん。キュートな笑顔が可愛らしいのに、溜めながらぐいんと伸びる脚の動きに美惚れます。


・サバンナ 新国立劇場バレエ団プリンシパルの木村優里さん。原題は " La savane / O ma charmante " で、過去の恋、愛しい人を回想する女性(振付家自身とも重なる)を情感たっぷりに踊られる木村さんに目が釘付けでした。しっとりしているのに動きがクリア、でも余韻がある。印象的な手の動きもエレガント。木村さん、すごい。この人は内面に何を持っているのかしら。


・バナナツリー 男性ダンサーのテクニック自慢が見もののこの演目。ジャンプもピルエットもバットゥリーも見事なお二人は、アメリカのユージンバレエのプリンシパルの山口浩輝さんと、バレエシャンブルウエストの藤島光太さん。山口さんのチャーミングさは、ギル・ボグスに勝るかも。見どころの跳び箱の前、今下手から上手に向かってホリゾントの裏を藤島さんが疾走中、と思えるのもバックステージツアーで見せて頂いたから。


・マンチェイガー ゴットシャルクの初期のピアノ曲『マンチャの調べ』でフィナーレ。 " LIFE GOSE ON"、「あなたもわたしも色々あるけれど、それでも人生は素晴らしいから進むしかないよね」というメッセージが溢れ出して大団円で大拍手。 日本で、海外で、プリンシパル、ソリスト級の皆さまが闊達に踊る『ガチョーク讃歌』は、素晴らしかった。2023公演のDVDを購入しようと思います(2回目書いてる笑)。 □ - - - - - - - □ - - - - - - - □


ここまで書いて気がついたら最初の方が消えていてびっくり。ブログの文字数が限界らしいので、次回に続けます。

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