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  • 執筆者の写真地引 由美 Yumi JIBIKI

クリスマスのくるみ割り人形

 秋になると国内外の各バレエ団のホリデーシーズンの公演として『くるみ割り人形』の案内を目にするようになります。海外のバレエ団は来日公演ができたところも、またオミクロン株流行の影響で来日が出来なくなったところもあり、残念です。  もう何年くるみ割り人形を生の舞台で観ていないだろう、と思い牧阿佐美バレヱ団のサイトで公演の座席予約表を見ていたら前から5列目が一席だけポツンと空いているのを見つけました。これは!と思いその場で予約。ほんの2、3日前のことです。

 チケットを入手して、当日。メルパルクホールってクロークは稼働しているのかしら?と調べながらホールのサイトの座席表を見たら…もしかして4列目まではオケピットになる?ということは5列目は最前列?  


 出かける時間も迫って来たので、座席表の確認はそこまでにして。最前列に座るのなら、服も香りももう少し華やかなものにしなきゃ、と。ニットのワンピースからベルベットに。香りもプレゼントして頂いた、軽やかで華やかなフローラルノートのブルガリ スプレンディダ マグノリア センシュアルを纏いました。ホールに電話で確認したらクロークはないとのこと。だったらコートは座席の下に収まるような薄手で暖かいものを選んで。



 ホールに着いたら、やはり最前列でした。指揮者の末廣 誠 氏の表情もよく見えて、ライブハウス並みの近さで聴く東京オーケストラMIRAI の演奏はとても素敵でした。花のワルツの冒頭のハープの音色も鮮やかに美しく耳に注ぎ込まれる様です。



 くるみ割り人形の音楽はメロディーの素晴らしさはもちろん、楽器の使い方が工夫された音楽の構成が、初演当時はとても実験的だったのでしょうね。シーン毎の変化する曲の表情が面白い。

 そしてもちろん、踊りや演出も各バレエ団によって個性豊かです。今回、牧阿佐美バレヱ団の舞台装置がとても面白いと感じたのですが、バレエ リュスで芸術監督をつとめた舞台芸術家、アレキサンダー・ベノアの原画をもとに、イギリスの舞台デザイナー、モシェ・ムスマンがデザインしたものだそう。1870年代は合成香料の黎明期。バレエ リュスの公演の客席も、香水の香りに満ちていたのだろうなぁと、楽しい想像をします。衣裳デザインはデヴィッド・ウォーカーの手によるもので、2008年のクリスマスに急逝した彼の遺作とのことです。


 そして、踊り。踊り方が上品。そして子供たちを大切にしている、と感じました。付属のバレエ学校がある団でないとネズミたちや、ましてやお菓子の国の小さなコックたち、なんて出演させられない。無料で全てのお客様に配布されるプログラムを見ると歴代のクララを演じた方のお名前が掲載されていて、彼女たちがその後、バレエ団のソリストやミストレスになって活躍されています。1963年に日本で初めてくるみ割り人形を上演して以来、連綿と続くバレエ団の遺伝子を感じました。第二幕の終わり頃、夢のお菓子の国が消える前に、金平糖の精がキスした指先をクララの額にそっと当てる。その仕草に子供たちへの愛と次の世代への応援を感じて、そしてそれはこの秋に87歳で永眠された牧 阿佐美 氏の姿に重なるようで。涙が出ました。



 終演後。時間差での退館でも、この賑わい。ホワイエは幸せな雰囲気に満ち満ちています。



 帰り道。明日から寒波がやって来る、という冷たい空気の中、東京タワーのライトアップもクリスマス仕様。六本木駅から東京タワーに向かうカップルたちの間を縫うようにして歩きます。



 増上寺には初詣の立て札が。

 今年も本当に、あともう少しで終わりですね。

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